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映像でつなげる人と人の輪

プロローグ

学生時代に映像制作やホームページ制作を勉強していた向は、採用面接で「システムをやりたい」と社長に直訴したが、配属されたのは店舗の精肉部門だった。一緒に働く仲間や先輩に恵まれたこともあり仕事は充実していた。部門内で“抜群に質が高い”と評価される国産牛をキレイに薄切りにし、売場に陳列した瞬間から飛ぶように売れていく。お客さんからの評価を肌で感じられる瞬間に立ち会えることは何よりの遣り甲斐だった。入社4年目には店舗の精肉部門の責任者であるチーフにも昇格し、順調なキャリアを歩んでいた。そんな時、社内公募で「映像制作」の担当を募集していることを知った。「私のやりたかった仕事だ――」。気持ちを抑えることはできなかった。

1章:素人がオールインワンで対応する

社内公募の面接を経て、向は映像制作を担当している総務部に異動してきた。前任者から仕事を引き継ぎ、2ヶ月後には前任者が異動、映像制作担当は向一人になった。まず取り組んだのは、店舗で流す映像のコンテンツを企画することだ。小型店をのぞくスーパー「DIO」と「LAMU」には、店舗の入口とレジの上に50インチのモニターを約4台導入し、メーカーの一般的なCMを織り交ぜつつ、自社オリジナルブランド「D-PRICE」の商品などの映像を配信している。ただ、そのコンテンツを企画するといっても、何をどう企画すればいいのか当時の向には分からなかった。
そこでまずは、「D-PRICE」の商品やバイヤーが押していきたい商品をヒアリングし、3分程度で作れる料理を考え、クッキングコーナーのように放送することにした。自ら商品を買って自宅で料理をし、レシピを考えてみる。効率的に撮影するために1本撮りではなく6つのレシピを考えて、1日で撮影し終えた。その後は、撮影したデータを編集し、完成した映像を半月に1本ペースで3カ月にわたって放送していく。このようなコンテンツの企画から放送するまでの作業は、向が一人で担当していた。

2章: 徐々に精神的なダメージを負っていく

順調に進み始めたように見えた映像制作の仕事も、向は少しずつ行き詰まりを感じるようになっていった。一つ目は、すべてを向一人で担当しているため、企画のアイデア出しや編集技術に限界を感じるようになってきたことだ。企画のアイデアが出てこない、撮影技術を向上させる方法が分からない、コンテンツが違うのに編集するとどうしても同じようなトーンになってしまう。この停滞感を打破する術が見つからなかった。
二つ目は、今まで感じたことがなかった距離感だった。店舗では常に仲間と協力し、お客様からの評価もダイレクトに感じることができた。映像制作では出演者をブッキングするのだが、恥ずかしさから出演を断る社員が多かった。「また断られた・・・」。理由も分かるし、仕方がないとはいえ、断られ続ければ気持ちは徐々に萎えていく。また、向とお客様との距離が一気に離れてしまったこともあり、ダイレクトな評価を感じる機会がなくなってしまったことも、向に精神的なダメージを与えていった。

3章: 人のつながりが作りだした浮上点

そんな時、独自商品を開発しているBO戦略室から映像制作の依頼が入った。映像を作ってほしいと依頼されたのは、初めての経験だった。その依頼内容は当社子会社の布袋乳業が製造しているラブエールの映像を作って ほしい、というものだった。ラブエールは10本入り98円の乳酸菌飲料で、スーパーの人気製品だ。映像制作を依頼されたことも嬉しかったし、スーパーの顔とも言えるラブエールが対象だったこともやる気に拍車をかけた。
映像が完成し、社長に確認してもらう。社長は見せ方に強いこだわりがあるため、この瞬間はやはり緊張する――「こんな素晴らしい映像をよく作ってくれたね!」、社長から最大級の賛辞を得た。それまでの行き詰まりで停滞感を感じていた向にとって、この時の嬉しさは格別だった。そして、もう一つ嬉しく感謝すべきことがあった。実は初めて映像制作を依頼してくれたBO戦略室の室長は、向が店舗の精肉部門で働いていた時に1年ほど一緒に働いたことがある先輩だ。その室長はラブエールの商品開発も担当していたため向に映像制作を依頼したのだった。当時行き詰まりを感じていた向にとっては「人のつながり」が生んだ奇跡に近い感覚を覚えた。同時に「人のつながり」のありがたみを強く感じた瞬間だった。

4章:次の世界を目指していく

「すみません、欠品してしまったので放送を中止してもらえませんか?」。突然鳴った受話器の向こうから、店長が焦っている様子が伝わってくる。理由を聞くと、お客さんから「モニターで放送されている商品を買おうとしたのに売り切れているじゃないの?」と問い合わせが入っていると言う。売上的に考えても機会損失だし、お客さんの期待に答えられないという点で、欠品を出すことは店舗ではご法度だ。そのことは店舗で働いていた向は重々理解している。ただ、お客さんからの評価がダイレクトに伝わってきたことがとても嬉しく、顔がゆるんでしまうのを抑えることはできなかった。
映像制作に携わりたいと思っていた夢が現実化した。そしてお客さんや店舗スタッフに評価される喜びまで体感できた。今後は映像制作の技術力を磨いて、誰もが出演したいと思えるような魅力的な映像を作っていきたい―― それが向の目指す世界だ。

プロジェクトメンバー

向主任

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